2013年8月31日土曜日

マウント ハーゲン「カフェインレス インスタントコーヒー 100g」のレビュー

マウント ハーゲン カフェインレス インスタントコーヒー 100g




ドイツ産のカフェインレスコーヒーです。




日本が誇るゴールドブレンドと比べるとぶっちぎりに高いですが、何よりカフェインレスということで夜も飲めるのが嬉しい!
ぼくは朝は食欲がなくてコーヒーを飲む習慣がなく、主に夜飲んでいます。胃も痛みませんし、きちんとコーヒーって感じがします。




結構苦いです。ゴールドブレンドに慣れていると最初は抵抗があるかもしれません。
また、マウントハーゲンを飲み慣れると、ゴールドブレンドが薄く感じます。







特濃牛乳とこれを1:1でカフェオレにしてみるととても美味しくなります。
コーヒーはカフェオレじゃないと飲みたくない。そんな気持ちになってしまいます。
砂糖入れなくてもおいしいです。







結構苦くて日本人の味覚ではあまりブラックでは飲めませんので、星4つとします。

2013年8月26日月曜日

雲黒斎「あの世に聞いた、この世の仕組み」のレビュー。

あの世に聞いた、この世の仕組み: 雲 黒斎

(和書)2013年08月17日 19:07
雲 黒斎 サンマーク出版 2010年3月19日



ぼくはこの本の前にニールの神との対話シリーズを読んでいたのですが、回りくどくて無駄な会話が多かった。この本を読み始めたときは、あまりの内容の簡潔さにびっくりしました。
悪い言い方をすれば既存理論のまとめ本ですが、逆を言うとなんでもこの本ひとつで足りてしまうのではないか。

マトリックスの説明なんかは、ぼくが常々考えて独自理論を展開している地球という社会概念の仕組みを強化してくれました。
この著者は発想が独特というよりも、至極明瞭簡潔な表現力が最大の武器だろうと思います。


とくにアセンションの説明は、各方面で語られているイメージをふっとばすような、これまた至極簡単で明瞭簡潔なものでした。
次元上昇の意味をですね、とてもわかりやすく伝えてあると思います。

スピ系の本としてはとてもよい本です。買ってよかった。

2013年8月25日日曜日

割と真剣に松下浩二ディフェンシブの試打の感想。

卓球行ってきました。場所は都筑ふれあいの丘の地区センター。
松下浩二ディフェンシブの試打です。



毎度おなじみ両面タキネスチョップ極薄ですが、打ってみた感じかなり安定しています。





・サービス

ここは極薄の特にすごいところですね。タキネスチョップは粘着なんてものは本当に全然ないのですが、松下浩二ディフェンシブと合わせるとあまりにも弾まないので、意図しなくても低く深いよく切れたサービスができました。

前まで使っていた松下浩二での下回転サービスの時よりも、さらに当てる位置を高く意識しないとネットしてしまいます。


そして、あまりの切れっぷりに元卓球部員ですら全然取れません。取れてもループが精一杯という感じでした。そのループすらよくネットします。
上回転サービスも同様に低く深く入ります。サービスに関してはかなりの満足度です。





・レシーブ

松下浩二と打ち比べてみました。松下浩二ディフェンシブは本当に弾みません。ラバーが極薄だからでしょうか?ラケットにほとんど吸収されてしまっている感じが伝わってきます。
松下浩二は適度な反発力があり、松下浩二ディフェンシブを使ったあとに松下浩二を使うと、とても弾みが違うのでびっくりします。ひとえに極薄だけのせいではないようです。

角度さえ合っていれば当てるだけで入ります。松下浩二ディフェンシブですから厚いラバーを貼ることはあまりないでしょうし、タキネスチョップはコントロール性抜群なのでなおさらです。
狙ったところにきちんと入ります。



・台上

ツッツキはよく切れます。当然ですが、厚いラバーよりも思い切って切ることができます。
たまに相手がミスをしてくれる程度の回転はかかります。ちょっと持ち上げる感じで切ったほうがいいかもしれません。
弾まなすぎてバウンド直後を狙うとネットにかかってばかりなので、頂点の近くを狙ってツッツキをする感覚のほうがいいと思います。


ところで、リフトをやってみました。まだ初めてで練習が足りないですが確かに回転はある程度無視することができました。
横回転サービスを出してもらって、思いっきり弾いていきました。極薄とは思えないスピードが出ますが、所詮は極薄なので過度な期待は禁物です。


リフトは思い切りが大事なようで、思い切って弾いていかないとミスばかりしてしまうようです。
弱々しく弾いていったときは全部ミスでした。入るかは入らないか頭で考えないほうがよさそうですね。




・カット


これに関してはいうことないです。たぶん、松下浩二よりも安定していると思います。キレは松下浩二に軍配が上がると思いましたが、本当に当たれば入る感じでした。中陣までなら許容範囲みたいです。
ただ、強ドライブに対してはおもいっきりスイングしないとボールが浮いてしまいます。ここはぼくの技術不足の感もあるのですが、ある程度は仕方ないことなのかも。




・ドライブ

えっ、ドライブ???
できませんから。

繋ぎにすらならないです。ネットしない程度のスピードしか出ません。ブンブン振ってるのに、非常にやりにくいです。
極薄だと回転あまりかからないので、リフトと同じく弾いちゃったほうが効率いいかもしれません。




・ブロック

実用的なのか、非実用的なのかわかりません。

打ったとたんにボドッと下に落ちてしまいます。
台に張り付いていなければブロックは難しいでしょう。





サービスだけで勝てる!
そんな気持ちにさせてくれました。
レシーブなんか凡ミス以外ミスらしいミスもないので、急に上手くなった錯覚を感じましたね!






だいたいそんな感じですかね。

初心者から中級者までの層、特にカットをこれから始める人、レシーブが苦手な人には、松下浩二ディフェンシブは最適だと思います。


すでにカットマンの人で、攻撃もしてカットもしたい人は、松下浩二を買ってください。
ひたすらカットに徹したい人は松下浩二ディフェンシブをどうぞ。















ちなみに、インナーフォースALCを借りて使ってみました。

カットマン辞めたくなりました。
それくらい使いやすかった。いままでの苦労はなんだったんだ!笑

タキファイアドライブ厚ですが、カットもできなくはないですが、攻撃が素晴らしく気持ちいいです。
見習ってぼくも次はこれ買おうかな。

2013年8月21日水曜日

夏バテなう。

夏バテなう。
今日は15時間以上寝てしまいました。



1日1食。それも少ししか入りません。
すごくだるい。それに、気分も落ち込んでいます。



リーマスという気分安定薬が増量されました。600mg → 800mg。
まだ効果の程はわかりませんが、これから感情がますますフラットになっていくのは避けられないと思います。


ローヤルゼリー3006mgが負けちゃいましたね。






そうそう、シブを漁っていたら、久々のヒットを見つけました。

「ダンスの相手(妄想)」/「koso」のイラスト [pixiv] : http://www.pixiv.net/member_illust.php?mode=medium&illust_id=19483441



可愛いですよね。ケモノさんは。


2013年8月20日火曜日

惚れて嬉しい 単に嬉しい 同じ時代に生まれて嬉しい



I Love You, 答えてくれ




~中略~




何か返してもらうため 君に愛を贈るわけじゃない
あとで返してもらうため 君に時を贈るわけじゃない
君はひどい目に遭いすぎて 疑い深くなってしまった
身を守るのはもっともだけど 世界全部毒だなんて悲しいよ
愛さずにいられない馬鹿もいる
気にしないで受けとればいいんだよ
愛さずにいられない馬鹿もいる
受けとったと答えてほしいだけさ


~中略~


プラスマイナス数えながら 君をみつめるわけじゃない
いつか実りをもらうため 君を大事にするわけじゃない
惚れたほうが損になるなんて 取り引きや投資じゃあるまいし
惚れて嬉しい 単に嬉しい 同じ時代に生まれて嬉しい
愛さずにいられない馬鹿もいる
悩まないで受けとればいいんだよ
愛さずにいられない馬鹿もいる
受けとったと答えてほしいだけさ


以下略











いいですねー。中島みゆき。
特に2番のA・Bは最高です。







この間失恋をしましたが、べつに失恋したからこうして書いているわけではありません。
むしろ、この歌は結構昔から持ち歌としてカラオケや旅行などの締めに歌っています。

ちなみに、ぼくのオハコは「Tell Me,Sister」。










みゆきさんはどうしてこんなに心動かす詩を書けるのか。作曲も奇をてらわず安定志向ですね。
かと言って曲調で泣かすようなことはなく、ただただ詩の重さで勝負してきます。







時代」や「地上の星」、「サーモン・ダンス」「命のリレー」が有名だと思うのですが、個人的には、冒頭に載せた歌と「Tell Me,Sister」、「Nobody Is Right」、「重き荷を負いて」「背広の下のロックンロール」が神曲です。


2013年8月19日月曜日

【写真つき】松下浩二ディフェンシブが届きました!【タキネスチョップ極薄】

レビューその1です。

松下浩二ディフェンシブ届きました!









板厚が超薄いです。当てることはたぶんないでしょうけど、もし台に当たったら割れちゃいそうなイメージ。
データとしては5.0mmらしいのですが、RBプロテクター6mm、両面タキネスチョップ極薄とくらべてみるとだいたいわかると思います。
わからなかったらすみません。

ちなみに松下浩二は5.4mmです。


データ

これからのメイン(仮)
R 松下浩二ディフェンシブFL
F タキネスチョップ極薄
B タキネスチョップ極薄


いままでのメイン(比較)
R 松下浩二FL
F タキファイアC中
B T-REX中



玉突きをしてみました。シルバーハート材を使用しているからか、全っ然跳ねません。松下浩二のイメージで行くとびっくりします。
重さはたぶん、松下浩二とあまり変わらないでしょう。
音がすごいです。いかにもって感じの飛ばなそうな音。

で、それに両面タキネスチョップ極薄ですよ。






買う前は変態ラケットとイメージのみで語ってましたが、実際見てみると実戦で使えそうでよかった。
まあ、実際使ってみないとですけど!



タキネスチョップは初めての使用なんですが、粘着とはこれいかに?
全然ペタペタしません。なんじゃこりゃ。回転力ナンバーワンラバーと書いてありますが真っ赤な嘘だと思ってよいでしょう。タキファイアC中と変わらないかそれ以下という感じ。

玉突きの段階からスピンにはガッカリです。




とはいえラケットと合わせたガチガチのカット用としては優秀な部類なんだろうなとも思います。
この組み合わせの最大の特徴は、まっっっったく跳ねないこと。それと、超超超コントロール性抜群なこと。まさに粘り倒すプレーに適しています。というかそれしかできないラケットっぽいです。あとストップ最強そう。

攻撃は望み薄でしょう。ループドライブはわりとかかりそうです。
台上はいまよりできそう。前陣カットに向いてそうなイメージ。
そして、当然ですが軽い!空気のようです。

以上、玉突きでの感覚です。



安定性最重視のカットマンはもう、使う以外の選択肢はないかなと。
公式の説明通り、当たれば入るって感じがします。


商品掲載サイトの一例。
本物の「卓球屋」 : http://www.takkyuya.com/goodspage.php?mk=O&mn=2&pg=1





って、あれあれ。
WRMのぐっちぃさんと同じ事書いてしまった。
まぁ、それだけ安定性に優れているということです。

ぐっちぃの卓球活動日記:【ぐっちぃ】松下浩二ディフェンシブ、オフェンシブの2本を試打! : http://yamaguchi.diary.to/archives/51746650.html


決して参考にしたとかではないのですが。





ちなみに、ぼくは松下浩二でもスローモーションのユラユラゆれるカットを打つことができる程度なので、厚さが極薄になったぶん、どう変化するのか楽しみで仕方ないです。

2013年8月18日日曜日

Yanni 「Tribute」のレビュー。

Tribute [DVD] [Import]: Yanni


個人的には「Adagio In C Minor」と「Tribute」がお気に入りです。

泣けるという意味では、In My Time とはちょっと違いますが、ヒーリングサウンドに困ったらとりあえずこの曲を掛けてみると和む。




並の天才ではないですね、このYanniという人は。
09-Waltz In 7_8 はタイトルからのイメージとピッタリ合います。 

日本にはたぶん、なかなか、というかいないのでは…。

2013年8月16日金曜日

リフトを練習してみます。

▶ 【WRM-TV】日本では知られていない『新レシーブ』を発見! - YouTube : http://www.youtube.com/watch?v=oMt2YGBn3wk

リフトです。
なんのこっちゃ?

どうやら極薄特化のチキータみたいなものっぽいです。

チキータは相手の回転に影響されるけど押し切る。
リフトは相手の回転を全く無視して、2球目攻撃を仕掛ける。


なるほど、ぼくは薄くて弾まないラバーが好きなので、これは試してみませんと。
タキネスチョップ極薄で。

簡単にできるって言ってるし、確かに初心者レベルだったら重宝しそうですねー。
やってる人が上手いだけなのかもしれませんがー。



ちなみに松下浩二ディフェンシブに貼る予定だったのは、WRMのボンバード極薄でした。
でも外国製ということで寿命の短さが気になって、結局タキネスチョップ極薄で妥協しました。

貧乏カットマンとしては、シートの特徴 → 寿命 → スポンジの硬さ というふうにおおまかな枠組みを決めています。


モノはたぶん19日に届くので、再来週土曜に初使用ということで。
ここは社会人のつらいところですな。

キングカズマ(笑)

ねえ、今どんな気持ち?ねえどんな気持ち?





サマーウォーズの花札こいこいアプリがあったので、やってみました。
ケンジが最弱で、ナツキが中で、花札とは全然関係のなかったカズマが最強です。

これ、最強なんですかー?公式さーん!


でも、テーブルをいじってなさそうなところが好感持てましたね。ふつう、最強とかはかなりテーブルいじられているのですが、このアプリはそういうことがなさそうでした。
乱数のままをいじっていないみたいなので、単純に運と論理的思考力のバトルでしたね。

ということで、世界チャンピオンのキングカズマよりぼくの論理的思考力が勝ってたということで!



・・・まあ、こいこいやったことない層もターゲットにしているのか、簡単そうだから勢いで有料にしてみるか的な層も狙っているのかわかりませんが!
それにしてはあまりにもひどぅい!!

最強難易度のキングカズマが1ゲームも勝てないなんて・・・。




しかも、ここのすごいところは、最大マッチ数である12マッチで完封したことですよ!!
それでいて、まだこのアプリはじめて2回目ですし、キングカズマとは初顔です。


初顔なのに、初顔の相手に世界チャンピオンが負けて、アバターを取られる。
使えるアバターがキングカズマになっています。

キングカズマのアバターを使うには、キングカズマに5連勝しないといけないのですが、5連勝どころか12連勝してしまっているので、公式さん・・・としか言えないですね―。








これならまだ、最弱をうたうケンジのほうが食い込みあります。
1点とっています。やるなケンジ。




ちなみに花見と月見は個人的に大嫌いなので、なしとしています。
最強というのは無料版では最強ということです。あしからず。


サマーウォーズ~花札KOIKOI~ 攻略 : http://iphoneac.com/summerwars.html

サマーウォーズ~花札KOIKOI~(FREE) - Google Play の Android アプリ : https://play.google.com/store/apps/details?id=com.pankaku.summerwars



あんま関係ないですがケンジ萌えキャラですよね。
主人公が冴えないといいカンジです。

2013年8月15日木曜日

流行に乗って変態仕様の松下浩二ディフェンシブを注文。

松下浩二ディフェンシブを注文しました。
ちょっと流行に乗ってみたかった。簡潔に言うと調子こきました。てへ。

現状
R:松下浩二FL
F:タキファイアC中
B:T-REX中



実はカールP4を使ったときから極薄の魅力にとりつかれていまして、いまのラバーをどっちか貼り替えてボンバード極薄にしようかと思っていたところですが、ここは妥協して、以下の組み合わせにしてみました。



将来
R:松下浩二ディフェンシブFL
F:タキネスチョップ極薄
B:タキネスチョップ極薄


かなり変ラケですね。変態ラケットです。
実用性あるかと問われれば「無くもないがやっぱり無さそうだけど極薄への期待を込めて」ですかね。

幾万ある用具の組み合わせの中でもぶっちぎりの上位に来るほど軽いと思うので、おおまかに現時点で考えられるであろうメリット・デメリットを書き出してみました。


両面極薄について

メリット
・リフトができる(2球目攻撃)
・チキータが割と簡単
・ストップがよく止まる
・ぶつ切り
・台上処理に優れる
・ツッツキが切れる
・弾くと相手の回転に影響されずに、どナックル(スマッシュ、リフトなど)

デメリット
・ドライブに難あり(ほぼ不可能)
・球威が軽くなる
・強ドライブの場合ラケットを落としてしまうおそれ
・台からあまり離れられない
・擦る技術が不可欠
・打球音



とまあ、得手不得手ありますが、あえてこのような変ラケにしてみました。
まあ、バカと天才は紙一重だっていうくらいですし。
冒険したいじゃないですかー。


ぼくが失敗したらその旨書きますので、これから両面極薄にする人は参考にしてください。





まだ届かないんですよー。卓激屋さん休暇なうなのかな?
届いたら試しますんで!ご期待!

Therion with anthropos ~獣人と人間と~ 第七話 命名

Therion with anthropos
~獣人と人間と~
第七話 命名

「ぼくは・・・・・・」
エンフィールドは下を向いたまま指ひとつ動かさない。目はうつろで、切羽詰まった表情をしている。
「ぼくの名は・・・・・・エンフィールド・・・エンフィールド・ヨヨナイト8世」
「まだそんなことを!!」
獣人にとっては甚だ憎い王子の名を出され、またしても声を荒げるデイガーじいさん。しかしエンフィールドはすべての覚悟を決めたように、静かに佇むだけだった。
「今度言ったら命はないと言ったな!?だのに人をバカにしおって、この―――」
「待って!おじいちゃん」
ファルが助け舟を出すかのようにデイガーじいさんをけん制する。可愛い一人娘に弱いのか、デイガーじいさんは怒ったように押し黙り、部屋の隅にある椅子にどっかりと腰を下ろした。
「わたしに心あたりがあるわ。あなた、もしかして元は人間?」
「・・・・・・・・・」
「・・・・・人間だとーう?」
何も答えないエンフィールドに対し苛立ちをあらわにするデイガーじいさん。ファルはエンフィールドのほうを向いたまま後ろ手でデイガーじいさんにサインを送り、そのまま続けた。
「わたしね・・・あなたを知ってる気がするの」
「知ってるも何もここの王子じゃろう!もし本当だとしたら王に突き出すわ!そして、そしてな―――」
「だから待って!おじいちゃん」
よほど強い信頼関係にあるのか、デイガーじいさんは娘に逆らうことはしなかった。半立になった腰をまた椅子にどっかりと下ろし、たかぶる心を落ち着けようと目を閉じた。
「いろいろ話せば長くなると思うけど・・・わたしたちは、あなたを議会に突き出すことも、悪くするつもりもないわ。おじいちゃんは短気だけど優しい人よ」
エンフィールドの目から涙がこぼれた。いままで決死の覚悟で臨んできた反動で、すっかり疲弊しきっていたのだ。エンフィールドは初めて助かったと感じることができた。見上げると、ファルがにこにこしていた。
「一緒に生きましょう。ところで、それだと別の名を付けなきゃいけないわね」
「わしに考えがあるぞ。フィトス・タクラウドなんてどうじゃ。男らしいじゃろう、のう」
「・・・あなたは・・・・・・ファー・マス」
「ファー・マス?」
きょとんとしているエンフィールド。デイガーじいさんはファルに無視されることに慣れているのか、それとも見えない絆でつながっているのか、または単純に親ばかであるのか、一見あんまりななりゆきであれどなぜか満足気にブツブツ言っている。
「これからよろしくね、ファー!」
「えええ!?」
突然の展開に動揺するファー。だが、これでファルと兄妹のように思わせておけば周囲と上手くやっていけそうなことくらいファーにもわかった。いまは選択の余地はない、そう考えるより他なかったが、若干楽しみにも感じた。
「でも、なんか、いいかな」
元気を出す他なかった。前向きに捉えることで、以前のしがらみに囚われ続けることをやめる。新しい再出発だった。ファーは変に笑って見せると、ファルは我が子を見る母親のような目線でファーを見つめた。デイガーじいさんの表情は緩かったが、何も言わずファーとファルを見守っていた。




デイガーじいさんの家の昼飯はあまり味がせず、スープは野菜が少々、そのほかはすべて汁だけだ。主菜は豆の煮付けと魚の塩焼き、副菜やデザートは貧乏のためにないが、汁の量だけは大量にあった。ファーは王宮の豪華な食事とあまりにもかけ離れた昼食に、特にスープは咳き込んだり顔をしかめながら半ば飲むようにして食べていた。デイガーじいさんとファルは一向に気にする様子もない。
「どうじゃ、ファー。少しは体力が戻ってきたか」
「いや・・・ははは・・・」
「何言ってるのおじいちゃん。ふふっ」
痩せた老人にはこの程度の食事で満足するのは難しくないだろうが、伸び盛りのファーにはかなり物足りない食事だ。だが同じくらいの歳であろうファルを横目に見ても、その食べ方からとても満足しているようには見えなかった。痩せているとはいえふたりとも骨ばってはおらず、それからするとこの食事は健康食のようにも感じられた。ファーは次第に料理の味に慣れていき、食べ終わる頃にはこの料理もありだなと思うようになっていた。
「そろそろいいかのう。ファー、わしらは貧乏じゃから、お前さんには動いてもらわねば困る」
「えっ・・・・・・あ」
この食事をタダで食べ、タダでこの家にお世話になる訳にはいかない。甘い考えをしていたファーは悟ったように顔を上げ、デイガーじいさんをじっと見据えた。
「つまり・・・ぼくは何をすればいいんですか」
「まあ、いきなり仕事は無理かなと思って。この家の中のことをしてもらうわ。ファーが寝てる時におじいちゃんと話し合ったのよ」
「そうなんですね、でも・・・ぼくにできるかなぁ。ぼくなんにも知らなくて」

恐縮そうに下を向くファー。デイガーじいさんとファルはにこやかだった。


Therion with anthropos ~獣人と人間と~ 第六話 家族

Therion with anthropos
~獣人と人間と~
第六話 家族

「あのなぁ・・・まずな、世の中には言っていいことと悪いことがある」
「・・・・・・」
デイガーの動きは止まったまま、じっとエンフィールドを見据えて落ち着いた声で諭し始めた。エンフィールドはしまったと思い、どう説明したらよいかを必死に考え始めた。
「あんたな、ここの区民は人間から敵対視されていることくらい知っとるじゃろうが。そしてだな、その人間たちの親玉はヨヨナイト王じゃの」
エンフィールドはこの状況を的確に把握していた。獣人区ではヨヨナイト一族の名を唱えることは絶対のタブーであり、区外追放処分を受けることも十分ありうる。区外追放とはつまり、人間たちに隷属して一生を奴隷として過ごすか、のたれ死ぬかということである。つまり―――
「エンフィールド・ヨヨナイトの名を出すことは、死罪に値することじゃ!!」
デイガーのしわがれ声が急に大きくなった。近くにはデイガーとエンフィールド以外誰もいなかったが、エンフィールドはビクッとして周りを見回し出した。
「まあいい・・・聞かなかったことにしてやろう。あんたのような未来ある狼をのたれ死にさせては罰が当たるわい」
エンフィールドから視線を逸らし、あまり毛が残っていない右手で気だるそうに後頭部を掻くと、視線を戻して前よりも厳しい目でエンフィールドを見据えた。痩せている年寄りとはいえ、虎人であるデイガーの瞳は殺さんばかりの鋭さを放っている。途端にエンフィールドはすくみ上がり、白い砂の上に尻餅をついた。
「今度その名を言ったら命はないと思え。わしではなく、他のアンスロたちが許さんじゃろう」
「は・・・い」
エンフィールドは文献で読んだことと、実際の現実というものの隔たりをいま体で感じていた。とはいえデイガーは自分に危害を加えるつもりも、悪いようにするつもりもないのも感じていた。内容の重みは大人ながら、悪さをしでかした子供を諭すことに似ていた。エンフィールドはうなだれ、これから置かれる自分の立場が頭をよぎった。デイガーの睨みから開放された脱力感と脱出劇の疲労がエンフィールドを襲った。これから自分は―――何も知らない無知な狼として―――
「わかったら行くぞ。早くしないと昼飯を食いそびれるからの。そうじゃ、わしの可愛い一人娘がいての、毎日ごはんを―――」
砂浜に倒れたエンフィールドがいつまでも動かないのに変異を察し、世間話をあわてて切り上げてエンフィールドを抱き起こした。
「まったく世話のやける狼じゃ。まーったく最近の若いもんは・・・まーったく」
ブツブツ言いながらエンフィールドの介抱をするデイガーだった。








国王が迫ってくる。片手には短剣と、もう片手にはロープを持っている。自分は狼の状態で両腕両足を縛られ、首に投げ輪がかかっている。投げ輪は国王までつながっているようだ。「散歩に行くぞ」ずるずると引きずられるエンフィールド。暗い石造りの廊下は荒目で痛かったが、その先に待っているのは針山だった。エンフィールドはパニックになり、激しく体を動かしながら国王に抵抗したが、ロープを引く力は鍛え上げた闘士のようだ。針山のすぐ手前にロータナスが現れた。「痛くしませんよ、エンフィールドちゃん」


「うあああああああああああぁぁ!!!!」
大声をあげると、そこは暗い廊下でも針山でもなく、簡素なベッドの上だった。エンフィールドは安堵を覚え、また同時にシャワーを浴びたように汗をかいていることに気づいた。
「ここは・・・・・・どこだろう」
ふと手を見ると、やはり人間のものではなく、太く短い5本指に爪が伸び放題、銀色の毛皮で覆われている自分の両手が見えた。
「・・・はぁー。・・・あぁー」
どうやら狼として生きる覚悟を決めなければならないようだ。夢で終わらせてしまいたかったが、現実は甘くない。小説で読むような展開にはなるはずがないからだ。そんなことを思っていると、タッタタッタッタという足音が聞こえ、2人の獣人が入ってきた。
「起きたか!」
それはデイガーじいさんであった。もう片方の獣人は見覚えがないが、どことなく自分に似ている気がした。体つきが細いところや、あまり壁がなさそうなところなど―――そしておそらく人種も。
「おじいちゃんから話は聞いてるわ。あなた常識も知らない変テコな狼なんだって?」
言いながらエンフィールドを抱き起こし、ベッド近くの背もたれのある椅子に座らせた。その胸にふくらみのあることと喋り方から、その獣人が女性だとわかる。
「あの・・・うん、そうなんだ・・・あはは・・・」
デイガーじいさんは何も言わない。先ほどの見据えるような目つきではなくなっていたが、エンフィールドが何かまた変なことを言い出すか待っているようにも見えた。
「わたしはファル。ファル・マスっていうの。16歳で、あなたと同じ狼です。よろしくね。久しぶりよ、この家にお客さん来るの!」
嬉しそうな声でエンフィールドとコンタクトを取ろうとするファル。体つきや喋り方から大人とは言いがたいが、まだ小さい子どもというわけでもなさそうだ。なんと言っていいか戸惑うエンフィールドに対し、デイガーじいさんが助け舟を出した。
「これがわしの一人娘じゃ。ファル。なかなか可愛い名前じゃろ?」
「あ・・・でも苗字が、違わないですか?」
デイガーじいさんはさして驚くこともなく、また隣のファルもにこやかだった。
「まあ、詳しくは後で話すとして、いまからわしらは家族じゃ!」
「えええっ!?」
あまりの突拍子もない提案に驚くエンフィールド。デイガーじいさんは臆すこともなく話を続ける。隣のファルはあいかわらずにこやかだ。
「まぁ、わしらは貧乏でな、そういうことじゃ。」
「よろしくね。あっ、そういえばまだ名前を聞いてなかったわね!なんてお名前?」


エンフィールドは、答えに詰まった。

Therion with anthropos ~獣人と人間と~ 第五話 保護

Therion with anthropos
~獣人と人間と~
第五話 保護

太陽が眩しく照りつけ鳥達の鳴き声が響き渡る大空の下、遙か水平線を望む海面の上にてエンフィールドは仰向けに浮かんでいた。決死の思いで脱出した反動が来ているのか、砂浜で日光浴をするかのごとく放心状態で空を飛ぶ鳥達を眺めていた。
「はあ・・・。どうなるんだろう」
自分がこれまで歩んできた経緯を懐かしくもぼんやりと追憶する。今の彼は誰が見ても銀毛の狼人であり、人間であった頃の面影は瞳の色と髪色程度である。そう、エンフィールドはこれから狼人として生きていくことになったのだ。そのことが思考の片隅に確固とした場所を取り、エンフィールドの心を苦しめる。
(・・・・・・・・・)
ふと頭をあげると城壁が小さくなっている。脱出してきたダクトからは海に直結しており、硬い地面にたたきつけられて絶命する心配はなかった。そのまま1時間ほど波に揺られて今に至る。
「あんがい楽しいかも」
エンフィールドは文献でしか世界を知らなかったため、自国のバザー広場にさえ行ったことがなかった。彼にとってこれからの生活はどれほど爽快なものであるだろう。エンフィールドはそのことだけに思いを集中させ、しばし悦に入っていた。そのとき、遠くから人の声がするのを聞いた。
「おーーーい、大丈夫かーーー!」
「っ!?・・・・・・っ、ひとーーーっ!!!」
仰向けをやめて両手を上げ、そのまま声のするほうへ泳ぎだす。なかなか人間のときと違って泳ぎづらかったが、少しづつその声の主のほうに近づくと、どうやら人ではないようだった。
歳相応の好奇心のためについ泳ぎを中断し、その人ではないものをまじまじと見る。声の主はすぐ近くまで波をかき分けながらやってきて、エンフィールドの手を掴んだ。
「大丈夫か、若いの。わしゃずっと見ておったで、あんたが波の上でひなたぼっこしとるだけなのかと思っとったんじゃ。だがどうもそれらしくなくての」
声の主はそういうとエンフィールドを立たせて岸辺の椰子の木陰まで連れて行こうとした。エンフィールドは初めて見る獣人というものに知的好奇心があふれていて、歩いている途中もくまなく相手を観察していた。
「なんじゃ、変な奴じゃのう。わしの毛皮の脱毛が珍しいのか?」
体格はやせていてヒョロ長い。体色は橙色、髪は少なくごま塩。体毛はところどころ抜け落ちている。タンクトップ、防水時計、ライフジャケット、デニム、長靴、軍手。斑点模様があり、そのことからエンフィールドは虎人だと見当がついた。
「それよりあんた、足は悪いのか?」
ぶっきらぼうに尋ねる虎人だが、エンフィールドには心当たりがない。あるとすれば、まだ狼人になって短いということだろうか。エンフィールドは多少困惑した。どう伝えてよいのかわからないからだ。
「いや・・・慣れてないというか、はは・・・」
「ああ?・・・・・・・・・ったく最近の若いもんは・・・ほれ」
椰子の木陰に虎人の荷物が置いてあるようだった。たどり着くとエンフィールドを立たせたままタオルで丁寧に体を拭いた。
「夏場といえど冷えるし臭くなるし不衛生じゃからのう、こういう時は人間がうらやましいのう。はっはっは」
彼なりのジョークを飛ばしたのだろうが、エンフィールドはそれに敏感に反応した。人間がうらやましい。その言葉に感化され、感極まったエンフィールドの目から涙が流れた。
「ん?なんじゃその水は。目から水が出るなんて、先ほどのことといいまったく変な狼じゃ!はっはっは」
嗚咽が止まらないエンフィールドを見てさすがに察した虎人は、態度を和らげて真剣な表情になった。
「なんか、あったのか。」
「・・・・・・・・・ひっ」
首を縦にふるエンフィールド。
「・・・・・・・・・仕方ない、お前さんがなんの問題もない元気な狼になるまで、わしが責任をもって面倒見てやる。」
「・・・・・・・・・ひっ」
今ここでこの虎人の誘いを断っても、もしくは誘いに乗っても、エンフィールドにはどうすることもできなかった。どちらがいいかなんて、選べない。だが、怪しい男だったらどうするか?人身売買に出されてしまったら―――
「・・・あの」
「大丈夫だ。自己紹介が遅れたが、わしはディケタ海岸管理美化推進部門の部長をやっておる。知っておるだろう、ディケタ。な」
ディケタとは獣人区の中で3番めに大きい企業で、主力は配達業務だ。最近では区民のゴミ捨てマナー啓蒙活動として海岸の美化を新たに始めた、給料は安いが待遇がいい優良企業である。この男なら、完全でなくとも十分信用には足りるだろう。
「はい」
「それからわしは、デイガー・ビーツというんだ。お前さんは?」
安堵のためか、エンフィールドはついうっかり口を滑らせた。
「エンフィールド・ヨヨナイトです」

デイガーの動きが止まった。

Therion with anthropos ~獣人と人間と~ 第四話 脱出

Therion with anthropos
~獣人と人間と~
第四話 脱出

「落ち着け・・・落ち着くんだ・・・」
エンフィールドがまず考えたのは扉を破って外に出る方法。だが、水責めに十分耐えうるであろう石造りの扉は硬く武骨で、もたもたしている間に溺れてしまいそうだ。
「どうしよう。あ、あの穴をくぐって!」
部屋の隅に空いている床穴は人が一人すっぽり入れそうな大きさだが、水が湧き出してくる以上潜ったとしても先に進めず、戻ろうにも確実に戻れる保証はないので自殺するようなものだ。それに、穴がどのくらい長いかも皆目見当がつかない。文献で読んだが水責め専用の貯水池が城内にあるため、この案は現実的ではない。
「ううう・・・」
(どうしようどうしようどうしよう)
エンフィールドはパニックに陥ろうとしていた。
「くそーっ!!!このやろう!」
パニック状態になり壁や天井を蹴ったり殴ったりしているうちに、まったく運のいいことに天井の中央だけどうやら薄い石版で空洞らしいという事に気がついた。カタカタと音がするからだ。
「!?これは・・・そうか、そうか!」
暴れていたエンフィールドの動きが止まった。人生始まって以来の一大覚悟を決めることにしたのだ。
「ここを通っていけば、かならず外に出られる!」
短絡的ではあるが、今のエンフィールドにはそれしか残されていないように思えた。天井中央に立ち、跳躍して力いっぱい天井を掌底で突き上げると、思っていたとおりダクトが現れた。
「うー・・・狭いな・・・」
子供しか通れなさそうな穴だったが、今のエンフィールドは獣人のために少々細くなっているので、なんとか通れそうだ。とは言え、ダクトの入り口はつるつるで、何も取っ掛かりがない。
「一か八かだ。イグザマイザー、力を」
エンフィールドは、待つことにした。

 ―――――――――――――――――――――――――――

水が押し寄せてくる。エンフィールドの胸毛、首元、顎の上、ついには耳の下辺りまで。足が浮いた。作戦開始だ。
「よしっ!」
水の力を借りてダクトへ潜り込む。ダクトには苔やら泥やらがびっしりとついており、抵抗はあるが今はそれどころではなかった。水はどんどん迫り、常にエンフィールドの胸元まである状態だ。
「もし、このまま出口がなかったらどうしよう。これは父さんの罠なのかも・・・」
ふとそんな思いが胸をよぎるが、今は振り払うしかなかった。ダクトは真っ暗で、どこがどうなっているのか全くわからず、城内の物音がかすかにダクトに反響している以外は、エンフィールドの心を安らげるものはなかった。
「あ!まずいまずい行き止まりだ!!!!まずい!!!」
突然天井にぶつかり慌てふためく。その怪我の功名か、すぐ横の大きいダクトにつながっていることを確認できた。縦のダクトとの接合部は小さいが、それ以降は屈んで走り込めるくらいの大きさだ。エンフィールドはすぐにその方向へと向かう。同時に水がどっと流れ込み、エンフィールドの焦りを急き立てる。
「光だ!!!!」
エンフィールドは駆けた。獣人の本能なのか、それとも四足のほうが速く走れるのか、エンフィールドはいつのまにか四足でダクトを駆けていた。光が差すところまでたどり着くと、なんとそこは鉄格子がかかっていて、人間の力では壊せないようなものだった。
「ちくしょう!!どうしてここまで来て・・・・・・・・・あ、いや、そういえばなんでさっきは壊せたんだろう」
エンフィールドの体格は決して良くなく力もあまりない方だった。人並み以下の力しかないエンフィールドが、どうしてあの石版を壊せたのだろう。その答えは、エンフィールドは薄々感じていた。
「さっきの石版と同じように、この鉄格子も外せるかもしれない!今のぼくなら!!!」
エンフィールドは文献でしか世界を知らないが、人間のことも獣人のことも文献のことだけは詳しく知っている。文献が本当なら―――今のエンフィールドなら―――
「とりゃあ!」
人間の間でよく知られる、エンフィールドが知る限り最も簡単で最も破壊力があり、最もローリスクな方法―――トラース・キック。片足で立ち、勢いをつけて全体重と勢いをもう片方の足で体を水平にして蹴るこの方法が獣人に通用するとは考えもしなかった。
「よっ、・・・もう一回!おりゃあ!もう一回!」
人間は足の関節まで水平になるのに対し獣人ではショックが吸収されてしまうので、なかなか突破できない。しかしエンフィールドは獣人の力を決して疑わなかった。何度もトライし、そして・・・
「ふんっ、とうわああああああああ!!!」

突然鉄格子が外れ、勢い余ったエンフィールドはダクトの外へ鉄格子とともに落ちていった―――

Therion with anthropos ~獣人と人間と~ 第三話 執行

Therion with anthropos
~獣人と人間と~
第三話 執行

石造りである牢屋ともいうべきこの部屋で、エンフィールドは絶望と悲しみのためまったく動けなかった。目はうつろで涙も出ず、顔の筋肉は弛緩したまま顎はだらりと垂れさがり、だらりと垂れた舌の先から唾液が少しずつベットにシミを作っていた。そうしているうちにエンフィールドの思考力が復活し始め、小一時間も経つ頃には過去のヒトとしてのまっとうな精神状態に戻っていった。
「う・・・お腹へった」
ベッドから降りて少し歩いてみると、少しヒョコヒョコとした歩き方にはなるが、それよりも足に伝わる生温かさが気になった。
「石造りなのに・・・どうしてだろう?」
耳を澄ますと、カチャカチャ、ガタガタという音がかすかに聞こえてくる。ちょうどエンフィールドが立っている床の下からだ。床に耳を近づけると音は更に大きくなり、その様子が想像できた。
「食器の音・・・そうか、厨房なのか。だからこの部屋は窓がないんだな・・・」
ヨヨン帝国の厨房は地下にあり、真上の部屋は熱がこもるため石造りになっているが、わずかに浸透するため念を押して尋問室のように普段使わない部屋としている。
「喉が・・・水・・・」
厨房から来る熱気による僅かな室温上昇とはいえ、エンフィールドの体は毛皮で覆われている。毛皮は熱が篭るために暑さにはとても弱く、体力の大幅消耗に直結する。エンフィールドの渇きは意識するたびに強くなっていくようで、耐えきれなくなったエンフィールドは扉の外に助けを求めた。
「誰か!水を・・・水をください!・・・父さん!父さん――!!」
扉は分厚くて頑丈だが、中の様子がわかるように極小の覗き穴がついている。覗き穴の中の兵士が足早に去っていったかと思うと、ローブに包まれた男が千人長1人に付き添われながら扉の前に立った。
「私はロータナス・カスタクト。初めて見ると思うが私はいわば汚れ役でね。・・・君を処分しに来た」
「・・・・・・・・・」
水をもらえるという期待を大きく削がれたエンフィールドだが、水のことなど忘れてしまうようなあまりにも唐突な言葉をかけられ、まるで時が止まってしまったかのように動けなくなってしまった。
「処分・・・そ・・・そんな、父さん・・・父さんがそんなこと、いう・・・わけ・・・」
「私は代弁者だ。君の冥土の土産話をしてやろう。そうだな、国王様は大変失望されていた。君にね・・・穢らわしい獣人になってしまった君に」
「な・・・なにを、言ってるの・・・まさか」
「国王様は考えた。大臣たちを呼んでな。そして、君のような穢らわしいケモノを城に置いておいては、国民に示しがつかないと・・・お考えになった。ましてや自分の血統に属するわけだから、そんな穢れた汚いケモノを次期国王になどできないと」
エンフィールドはすべてを悟った。父が獣人に対して排除的であり、何か理由をでっちあげてでも獣人区を潰したい気持ちが強いことはわかっていた。ロータナスの言うことに若干の誇張はあるだろうが、それでも自分がケモノになってしまった以上、父があとには引けないことはわかりきっていた。
「・・・・・・・・・」
エンフィールドは泣いた。悔しさと、歯がゆさと、いらだたしさに囲まれて。
「そして私は執行者だ。痛くしませんよ、エンフィールドちゃん。」
エンフィールドは扉の前に崩れ落ちた。ツーという音がして、扉の覗き穴に棒が差し込まれた。扉が開いて執行者が入ってくる様子はなかった。
(餓死か。・・・くっ・・・そ・・・)
しばらくして部屋の隅の床が外れ、チャポンチャポンという音がしてきた。次の瞬間、水が床穴から湧き出し、瞬く間に床に広がり始めた。床に設置された拘束具、椅子の足、ベッドの足を取り囲み、エンフィールドはとてつもない恐怖感と危機感を感じた。
(まずい!!!悲嘆にくれている場合じゃない、ここから出る方法を探さなきゃ!なんとしてでも、ここから出なきゃ!!)


Therion with anthropos ~獣人と人間と~ 第二話 変貌

Therion with anthropos
~獣人と人間と~
第二話 変貌

『王族の儀式』が始まる一週間前から、城中が慌しくなっていた。裏口から出入りする魔法使い、気功士、催眠術師、霊媒、祭司たちが忙しそうに行ったり来たりしている。エンフィールドの病気を城外の人々に知られないようにとの王の命令で、日に日に厳しくなってゆく衛兵や上級兵の警備と声色。もちろん王の謁見は禁止され、民には何も伝わっていないので街には様々な噂が立ち、不安を抱くようになった人々も少なくなかった。
儀式まであと1日に迫った日の夕暮れ、エンフィールドが食堂の何も置いていないテーブルに一人で座って空腹に抗っているとき、王の手が自分の肩に置かれるのを感じた。
「エンフィールドよ、頑張っているようであるな。」
「父上・・・。」
断食に慣れていないエンフィールドは、さすがに苦しそうだ。しかし、空腹よりも病気を治癒させるという決意の方がはるかに強いためか、今のところは耐えられている。
「さすがに3日もの間断食というのはかなり苦しいと思います。まだ2日目だというのに、もうこの空腹のひどさ。食べてはいけないのは分かっていますが、誘惑に打ち勝てるかどうか・・・。」
王は何とも表現し難い複雑な顔をした。
「わが息子よ、全てはお前の肩にかかっているのだ。よいか、決して希望を捨てるでないぞ。」

ついに待ちに待った3日目の朝、城の中ははちきれんばかりの緊張に満ちていた。各城門の見張りや城の中を警備する上級兵などは、たまりにたまった疲労が目の下の隈と一緒に現れている。
12時を告げる鐘が鳴り、別館地下二階の通称『清めの間』と呼ばれる吹き抜けのある部屋に30人余りの魔術師や祭司たちが神妙な面持ちで入ってきた。
「よし、では始めてくれ。」
王が言い終わると同時に、まるで吹き抜けから空気がなだれ込んでくるように、空間の気の乱れが生じた。
「ゲア・シュム・アスタ・セレヌテレス・オキア・マギアス・セイオニアスタリオン・・・。(全能の神よ、われらの祈りによりて、この者の厄災を清める方法を我に示すべし・・・)」
祭司が言う言葉を周りの30人近い魔法使いたちが一斉に繰り返す。
「テルア・デルタ・テレス・キリエウス・ストラ・ピスタ・サハスラーラ・シートレイズ・
ペンデュラム・・・(このペンデュラムの力で汝の進むべき本当の道をサハスラーラに指し示せ・・・)」
祭司が持っているペンデュラムの動きが激しくなる。同時に変性意識状態にあるエンフィールドは、頭頂のサハスラーラと呼ばれる7個目のチャクラに膨大な宇宙エネルギーが流れ込んでくるのを感じた。このままいけば成功に終わるだろう、と誰もが確信した。
「・・・エンティスト・マハーラ・アイダウム・・・セリエス・セレスト・セレティーズ!
(我汝に命ず・・・神の祝福・・・栄光を受けるがいい!)」
突然、祭司の持っていたペンデュラムが粉々になり、周りの机、箪笥、燭台はポルターガイスト現象のようにガタガタと激しく揺れ動き、周りの気は狂ったようにあちらこちらへと動き始めた。と、同時にエンフィールドの口から猛烈な邪気を放つ人の形を成した漆黒の霧が出てきた。
「ウォー・アイリス・マハーラ・シャディースト・エンズライカン・ワステイタ・ツヴァヘリング・ベクセー・ウォー・アブソリュート・レイ・コンクリューション!!!
(我、ベクセーとの契約により汝らに命ず。この儀式は我により無効となり、汝は絶対的に人狼に変化し、完全に結び固められる)」
「・・・・・・・・・!!」
突然、エンフィールドを中心とした同円心状に、爆風と衝撃波が巻き起こり、エンフィーストの正面にいた祭司はショック症状と重度の火傷により、声にならない叫び声をあげて吹っ飛び、少し離れた所にいた魔法使いたちは打撲、軽度の火傷を負った。
その衝撃波の範囲があまりにも広かったため、もともと衝撃に耐えられるようには作られていない『清めの間』は大部分が壊れ、儀式はやむを得ず中止になった。



「ここはどこだ・・・?」
深い闇の中を、エンフィールドはたった独りで歩いていた。
「光は・・・出口はないのか!?」
歩けば歩くほどに、その漆黒の闇は恐怖となってエンフィールドを包む。
「くそっ・・・誰か、誰か助けてくれ!・・・怖いよ・・・」
方向も分からずただ独りさまよう。もう疲れて動けないほど歩くと、コンクリートのような材質の壁に突き当たった。
「もう、先がないのか・・・どうするんだ」
そのとき彼は、後ろからまるでバックライトのように燦燦と降り注ぐ、ひとつの光が現れ始めたのに気がついた。
小さくも大きくもない、光。前の壁がスクリーンのように変化し、それに向かって光を投影している輝きは、冷たかった。
「いったい何だこれは・・・。僕に何を見せようというんだ」
しばらくして画面に映ったのは、かの狂気の天才科学者、ベクセーだった。
しかし、当時のエンフィールドは薬で十分に眠らされていたため、ベクセーの姿や顔つきを見ても、それがベクセーだと分からなかった。
やっとの思いで手に入れた、このかわいいサンプル・・・!
サンプルと呼ばれたモノをよく確かめようとしてエンフィールドは画面を覗き込んだ。
「こんな下劣な実験を見せてなんの意味があるんだ?それに、あのサンプルはまだ子供じゃないか。だけど・・・幼少の頃の僕に似ている」
怖いもの見たさでしばらく見ていたエンフィールドは、あることに気づいた。
「これは・・・僕が時々見るあの夢と同じだ・・・一緒だ・・・そしてあの少年は僕だ・・・」
このフギン王国全ての研究機関の最高責任者であるこのベクセー・D..マウザーヴェルケの手に掛かれば、こんな物はすぐに作れるわ!
映像はその場面で途切れ、光も消え、後には冷たい闇だけが残った。
「あいつが・・・ベクセーが・・・僕を改造したのか・・・」
エンフィールドの目から水がこぼれた。それと同時に強い憎悪の念に駆られた。
「そうか・・・やっと分かった・・・お前のせいか・・・!ちくしょう、必ず殺してやる!この野郎・・・くっ・・・!」

目が覚めると、そこは石造りの薄暗い部屋のベッドの上で、窓はなく、扉も頑丈そうな鋼でできている、尋問室や牢屋のような感じの場所だった。
「あ・・・っ・・・体が重い」
儀式での失敗で体力を相当奪われ、さらに自分をこの状態にしたベクセーへの怒りのため、まるで両手両足に枷をつけられているような、だるさ、倦怠感、眠気。
そして、全身が毛布に包まれているような、ふさふさとした手触り、生温かさ。
「・・・!!もしや!」
疲れているにもかかわらず、その感触に対するショックがあまりにも大きいため、ベッドから飛び起きて確認した。
「体が・・・全部・・・」
エンフィールドの体は、すべて銀色のふさふさした毛に覆われ、膝の関節は逆に曲がり、足と手は五本指を維持しているが、獣のように太く、短く、爪も長くなっていた。
「顔になにかついてる・・・?」
目と目の間に、何か銀色の突起がついている。そして先端には、黒く湿っぽい何かがついている。
「・・・・・・・・・・」
触って確かめて、愕然とした。
突起物も、黒いものも、自分の鼻だったのだ。
顎の輪郭や顔全体が原型を留めていないほど曲がり、歪んでいる。
「・・・・・・・・・・」
エンフィールドの恐れていたことが起こってしまった。
この部屋には鏡はないが、彼には今の自分の姿がありありと想像できた。
これが夢なら覚めてくれ。そう強く願うエンフィールド。だが、諦めてしまったかのように全身の力が抜け、ばったりとベッドに伏せてしまった。


第二話 終

Therion with anthropos ~獣人と人間と~ 第一話 前兆

Therion with anthropos
~獣人と人間と~
第一話 前兆

「ククククク、さぁてそろそろ始めるかの!」
機械油と化学薬品の臭いがする狭く薄暗い部屋の中で、一人の白衣を着た男が手術台のようなものの上で怪しく笑う。
「やっとの思いで手に入れた、このかわいいサンプル・・・!」
手術台のうえで横たわっているサンプルと呼ばれたものは、どうやら少年のようだ。少年と言ってもまだかなり幼く、上半身裸でライトに照らされている。麻酔で眠らされているのか、抵抗の形跡は無く、すやすやと寝息を立てている。
「ククククク!まずは電気メスの高周波電流で組織を焼き切り・・・剪刀でこれを引っぺがして・・・。モスキート鉗子でつぶして遮断・・・。」
その男は科学者らしく、さまざまな手術器具を使ってテキパキと無駄の無い動きで組織を切り開き、何かを埋め込んでゆく。少年にかけられた麻酔がよほど強いのか、手荒な扱いをされても少年の目は明くことがなく、時折苦しそうに筋肉を痙攀させているだけである。
「開創器で広げておいて、神経鉤で牽引・・・。」
だんだん男の額に大粒の汗が滲んできた。手術を開始してからすでに3時間が経過している。
「ドゥベーキー鑷子・・・鉗子・・・メッシェンバウム剪刀・・・クックックックッ!!出来てきた、出来てきた!!・・・後は、あの小娘から抽出した最高純度のデオキシリボ核酸を注入して・・・」
男の顔に笑みが浮かんでくる。しかしそれは、一般の外科医がする成功の笑みではなく、狂気に満ちて引きつった笑いで、その落ち窪んだ目の光は、もはや正気ではない。
「そしてヘガール持針器を使い丸針で組織縫合、角針で皮膚縫合・・・!!クァックァックァッ!!手術は成功した!!完璧だ!このフギン王国全ての研究機関の最高責任者であるこのベクセー・D..マウザーヴェルケの手に掛かれば、こんな物はすぐに作れるわ!カカカカカ!
手術は成功したようだ。今のところ、少年の体に変化は見られない。しかし、少年は手術創の痛みと体内に埋め込まれた物の拒絶反応によって、苦痛で顔を歪ませ、全身から汗が吹き出ている。
「フム・・・。やはりこの実験体では少し無理があったようだな・・・。だがそんなことは承知の上、そもそもこの王族のサンプルでなくては“獣人に秘められし潜在能力を受け継ぐ”ということなどできぬからな!!クァックァックァッ!!!」
そんな意味深長なことを言い終わると、男はベルを鳴らして使いの者を呼び、その男に命じた。
「このサンプルを元の国へ返しなさい。そして、こいつが成長したときこそ私達の野望は達成されるのだ!ケケケケ!!」

――――――――――――12年後――――――――――――

5つある王国の中で最も強大な軍事力を誇るヨヨン帝国。その街の景観は非常に美しく、その範囲はかなり広大だ。その街と城を敵の攻撃から守るために、初代国王から始まり3代にわたって築き上げた巨大な城壁がそびえている。その城壁の厚さは歩いて20分も掛かるほどであり、内部にはこの国の特産であるオージュ石から作られた歴代の国王、英雄達の石像が設置してある。また人民層は貴族、軍人、商人、庶民など様々で、みな特に貧しい暮らしはしていないが、国の北東部に獣人区があって、そこだけ規制がとても厳しく土地も激安で公共設備が行き届かず、貧困に苦しんでいる。また広場には内容を問わず様々な仕事と活気が溢れるギルドがある。
その軍事力の結晶ともいえる要塞のような城の王子の寝室で、一人の少年が横たわっていた。その少年は、ひどくうなされているようであり、額には大粒の汗がにじんでいる。
「ぅ・・・なにを・・・するんだ・・・痛い・・・やめろ・・・やめろぉぉッ!!」
突然叫び声をあげてベッドから飛び起きた。その瞳孔は開いており、息が激しくあがっている。
「ハァ、ハァ、ハァ、ハァ・・・。またあの夢だ。もう見なくなったと思っていたのに・・・!うああぁぁぁぁああッ!!」
その叫び声を聞いた寝室の外にいる二人の衛兵は、吃驚したと同時に、またかという顔をした。
「またあの王子様がうなされておられるなぁ。仕方ない、国王の命令ですぐにお伝えしろと言われているからな。おい、お前すぐ行って報告してきてくれ。」
国王の間は、軍事上の理由もあって一番守りが堅いと言われる別館6階の一番奥に存在する。そういった事から国王の間に通じる道は狭く、階段も急で、各階には防火扉のような重く頑丈な扉がある。その衛兵は、そういった難所を疾風のように飛び抜けて、非常に短い時間で入り口にたどり着いた。
「騒々しい、何用であるか。」
いかに身軽な兵士といっても、甲冑の音がうるさく響く。その音を聞きつけて親衛隊長が衛兵を引きとめた。
「申し訳ありません、先ほど王子様が例の夢を見られたご様子なので・・・。」
その衛兵が言い終わる前に、親衛隊長は全てを理解したようで、もうよい、と手で合図を送ると、火急の用事であるので王に報告いたせ、と部下に命じた。するとまもなく、巨大な王室の扉が重い音を立てて開き、王と側近の大臣が出てきた。
「ううむ・・・、それではすぐに王子を・・・!」
「もう来ています。父上。」
ひどく心配した様子で衛兵に声をかける王の言葉をさえぎって、廊下の扉からよたよたと姿を現したのは、先程寝室で苦しんでいた王子だった。
「もう大丈夫なのか?」
「いいえ、まだ体調が優れません。それに・・・。」
すると王は何かを予感したように顔色を変え、王子の言葉をさえぎり、周りにいる兵士たちに、私達だけにしてくれ、と言った。兵隊たちが去っていき、周りに誰もいないのを確認すると、王室の扉を閉め、閂をかけた。
「もしや・・・。エンフィールド、体を見せなさい。」
王は王子の病気を隠すために身に付けさせた身の丈に合わない2周りほど大きい服を脱がせた。その体があらわになると同時に王はひどく失望し、落胆した様子でため息をつき、首を振った。
「父さん、また新しいのが出てきたよ・・・。」
裸になった王子の体には、灰色がかった白色のふさふさした体毛がたくさん出ていた。それは人間の物ではなく、範囲は胸まで達していた。さらに尻の部分からは大きなふさふさとした尻尾が生えており、足の形も動物のように曲がっていて、手や足の爪もかなり長く伸びている。そして頭の帽子をとると、側頭部の両側に、大きな動物の耳のようなものが生えていて、人間の耳の部分はもはや影も形も残っていない。体色も肌色ではなく人狼の色であり、体の形は人間のものだが、裸で見ると動物的要素も兼ね備えられている。
「ううむ・・・。今度は鎖骨の部分に来たか・・・。これはもはや、『王族の儀式』を執行するしかないな・・・。」
「王族の儀式って・・・父さん?」
そんなものは聞いたことがないという顔をする王子に、王は深刻な顔をして語り始めた。
「王族の儀式とは、このヨヨン王国始まって以来受け継がれてきた、王族にのみ存在する秘められし特別な潜在治癒能力を全て引き出し、最大限にその力を利用できるssという特別な儀式だ。その儀式には、全能の神セイオン・ウノ・イグザマイザーの管理の元で関係者の3日間の断食、祈り、そして途方もなく膨大な魔力が必要だ。変性意識状態の中で、しかも宇宙のチャクラを被験者の体に取り入れるため、その急激な変化に耐えられずに症状がもっと悪化したり、最悪の場合、全生活史健忘・・・つまり儀式の前までに蓄積された全ての記憶がぶっ飛んで、『ここはどこ?私は誰?』というような状態になってしまう。」
そのような長い説明に相槌を打ちながら聞いていた王子は、もう慣れているのか少しも驚いた様子もなく冷静に返答した。
「そんなことはいいよ、父さん。僕も自分なりにこの病気の解決策を模索してきたんだ。夢を見るたびに出てくるなんて、誰も知らない、今までに起こったことのない病気なんだ・・・。獣人と結婚して、その子供がこの状態ならまだしも、人間の子供で、後天的に起こった例っていうのはないんだって。」
王には全て分かっていたことではあるが、その息子の言葉を聞いた瞬間に何か熱いものが中からこみ上げてくるのを感じた。しかし、それを必死に抑え、詰まった声で息子を激励した。
「私の最愛なる息子エンフィールド・ヨヨナイト、よく聞きなさい。たとえその儀式が失敗に終わっても私はお前を一生守り続ける。人々にこのことが知れ渡っても、王国が崩壊しようと私は必ずお前のそばにいる。国王としてではなく、一人の、お前の父親として・・・!!」

第一話 終